ラ ヴ ェ ル : ボ レ ロ

  5月にオーディトリアムで東京フィル・ハーモニー交響楽団が演奏する曲です。
  前衛舞踏家イダ・リュビンスタインは、スペインの音楽に興味を持ち、アルベニスの作品をバレエにしようとラヴェルに編曲を依頼しました。ところが、アルベニスの作品はすでにバレエ化され、新たな編曲は法的にもゆるされませんでした。そこで、ラヴェル「スペイン=アラビア風の主題」で新たな作品を書くことにしたのです。その夏、ラヴェルは避暑地で水着のままピアノに向かって主題を弾き、友人に「この主題になにか根気づよくうったえるものがあるとは思いませんか? ぼくはこいつを全然展開させずに、せいいっぱい管弦楽を少しずつ大きくしてゆくだけで、なんども繰りかえしてみようと思うんです。」と語ったそうです。
  その言葉通り、同じ主題を全く変化させずに繰り返すだけ、楽器の音色の変化と、編成を大きくして次第に盛り上げるという変化だけで積み重ねて行きます。
  小太鼓のソロがボレロ主題を出しますが、一般に用いられるセレソ(スペインの舞踏家)のリズムとは少し違い、テンポも遅くなっています。このリズムは曲中で169回も鳴らされます。曲は全部で340小節ですから、最後の2小節以外全てこのリズムが鳴っている訳です。フルートが主題を演奏し始めますが、16小節ずつの前半・後半から成り、転調も変奏もせずに繰り返されます。楽器の編成だけで聞かせるのです。例えば5回目の主題ではホルンとチェロがハ長調で演奏しているのに、フルートはホ長調とト長調で一緒に演奏しています。こうした変化が随所にあって、次第に盛り上がって行きます。そして、旋律の後半部は下降音で構成されているのに、最後になって突然上昇を始めます。そこでホ長調に転調すると、頂上で一気にハ長調に戻して終始します。この最後の8小節は印象的ですよ。
 作曲者自身の指揮による演奏が残っています。モノラル録音で音質も良くないので、色彩感や盛り上がりに欠けるものです。生のフルオーケストラで聞けるというのは幸せなことです。

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