ビ ゼ ー (1838〜1875)
真珠採り:「耳に残るは君の歌声」が「真珠採りのタンゴ」として有名です。
アルルの女:演劇用の音楽として作った作品。第1組曲を本人が編曲しています。これが死後大変な人気となり、友人が第2組曲を作りました。1曲目の「タンブーラン」の中間部、4曲目の「ファランドール」の活発な主題は「カルメン」から取られたものです。「ファランドール」を第1組曲の最初に聞かせた「王の行進」と組み合わせたアレンジが見事ですが、ビゼー自身は聞いたことがないはずです。
カルメン:作曲者の最後の作品。次から次と有名な旋律が出て来ますね。しかし、初演された当時は明るいオペラ・コミックの全盛期で、このような暗く悲劇的なドラマは人気がなかったそうです。初演は不評でさんざんで、これを苦にしたことがビゼーの死期を早めた、とCD等の解説には書かれています。ところが、どうやらこの話はでっち上げの様です。確かに初演での評判は良くなかったものの、その後どんどん人気を上げ、ビゼーが死ぬまでに33回、そのシーズンだけで50回以上の上演が行われたのです。彼の作品でそれまでに最も人気の高かった「真珠採り」の上演回数が17回ですから、この数字を見ただけでも人気の高さが分かるでしょう。
♪粗筋と曲目:第1幕「行進曲」と「宿命」をつないだ序曲で幕が開く。タバコ工場の前で兵士らが通る人を眺めて歌っている。そこへミカエラがドン・ホセを訪ねてくるが兵士らにからかわれて逃げ出す。「衛兵の交代(子供達の合唱)」で兵士が交代、休憩に入るホセはミカエラが来たことを知らされる。タバコ女工らが登場すると、女達を見ようと町の人が集まって来る。お目当てのカルメンがいないので男達が呼ぶと、宿命の主題に乗って現れたカルメンが名高い「ハバネラ」を歌う。カルメンは見向きもしないホセにアカシアの花を投げつけて去る。あきれたホセは花を拾うが、ミカエラが来て慌ててポケットに隠す。「愛の二重唱」を歌ってミカエラが帰ると、タバコ工場で喧嘩が起こり、反省の色を見せぬカルメンだけが逮捕される。カルメンはホセと二人きりになると、「セギディリャ」を歌ってホセを誘惑、逃がしてもらう。
第2幕「アルカラの竜騎兵」と題された前奏曲で幕が開くと、セギディリャの酒場。カルメンらジプシーの女達が「ジプシーの踊り」を歌って踊る。ホセの上司は、カルメンを逃がした罪で服役したホセが釈放されたことを伝える。そこへエスカミーリョが現れ、「闘牛士の歌」を歌う。彼はカルメンに声をかけるが、この時カルメンの心はまだホセの方にある。カルメンが閉店した酒場に一人残ると、遠くからホセの歌が聞こえる。これは「竜騎兵」を無伴奏で歌う印象的な場面である。カルメンは「カスタネットの踊り」でホセをもてなすが、帰営のラッパが鳴ってホセが帰ろうとしたため、カルメンは機嫌をそこねる。ホセは取っておいたアカシアの花を取り出し、「花の歌」でカルメンの機嫌を取る。そこへ上司がカルメンを口説こうと戻って来たため、ホセと言い争いになり、ついにホセは軍を捨ててジプシーの仲間に入ることになる。
第3幕「前奏曲」で幕が開く。これはもともと「アルルの女」用に作ったものといわれ、あちらの有名な「メヌエット」と通うものがある。前の2幕とは対照的に暗い山の中で、ジプシーらが「行進曲」を歌う。ミカエラがホセを探しに来て、「夜想曲」を詠唱、ジプシーらが来るので姿を隠す。カルメンは軍を捨てたことを後悔しているホセに帰るよう勧める。そろそろ愛が冷めて来ているのだ。女達がカルタ占いを始めカルメンも加わるが、カルメンには死のカードしか出ない。二人の美しい歌とカルメンの悲劇的な歌が見事な対象をなす「カルタの歌」である。エスカミーリョが現れ、ジプシーの仲間を闘牛場に招待すると言う。カルメンが目当てと知ったホセと決闘になるが仲間に止められ、現れたミカエラに母の危篤を伝えられると山を下りる決心をする。遠くで帰って行くエスカミーリョの歌が聞こえ、カルメンがそちらへ歩み掛けるのをホセが止める。
第4幕「アラゴネーズ」で幕が開くと闘牛場の前。「闘牛士達の入場」は序曲の行進曲を観客が歌うもの。エスカミーリョがカルメンを連れて登場すると、観客の興奮は最高潮に達する。ジプシー仲間からホセの姿を見たと聞かされたカルメンは、全員が闘牛場へ入った後一人残る。現れたホセはカルメンに戻ってくるよう説得するが、カルメンは応じず、ついにホセに刺し殺される。この場面は「宿命の主題」「闘牛士の歌」等が入り交じる見事な場面となっている。
印象的な曲が多いので、いろいろ編曲されています。「第1組曲」は前奏曲を並べただけですが、序曲を二つに分けて冒頭と結びに持っていったセンスが光ります。「第2組曲」はアリアのオーケストレーションを並べたもので、最後は必ず盛り上がる「ジプシーの踊り」になっています。5月にオーディトリアムで行われる東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会で、序曲を演奏が演奏されます。お楽しみに。
サラサーテはヴァイオリンの技巧を駆使して「カルメン幻想曲」を作っています。導入は第4幕への前奏曲ですが、後はカルメンのアリアだけを並べてドラマチックに編曲しています。「ハバネラ」でソロとオーケストラが半小節ずつずれて演奏する部分が印象的です。
チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」はカルメンによる作品だそうです。第1楽章は第1主題が最後の場面でカルメンに帰るよう哀願するホセの歌、第2主題は「宿命の主題」のアレンジです。第2楽章では「カルタの歌」と「花の歌」、フィナーレは「闘牛士の行進」と「セギデリャ」と、主題はカルメンの曲のアレンジですし、随所にカルメンらしい音楽が聞こえて来ます。ただ、聞いた瞬間に「あっカルメンだ」と分かるのではなく、明らかにチャイコフスキーの作品になっているところが見事です。
シェドリンの「カルメン」はバレエ音楽として新たに編曲されたものです。現代的な打楽器を駆使したオーケストレーションが見事ですが、「闘牛士の歌」だけは原曲のままの編成になっています。ところが歌声だけが欠けているのです。つまりカラオケになっているんですね。あの歌を想像して下さいという訳で、この「カルメン」が広く親しまれた名曲でなければ成り立たない作品なのです。