芥川龍之介について 
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大学入学後、夏目漱石の木曜会に親しく通った芥川龍之介は、24歳の時に雑誌「新思潮」に「鼻」を発表し、それが漱石の激賞を受け、はなばなしく文壇に登場します。初期の作品では、古典説話に題材を得、登場人物の心理を理知的に鋭く解釈して見せ、中期には児童雑誌「赤い鳥」に、現在も多くの小学生・中学生に読み継がれている「蜘蛛の糸」「杜子春」「トロッコ」などを発表しました。そして後期、自伝的色彩の濃い小説「大導寺信輔の半生」などを経て、「河童」「歯車」などの名作を発表しながら、「将来に対する漠然とした不安」を抱き、昭和2年、35歳という若さで自らの命を絶ちました。
芥川の数ある傑作の中から今回紹介するのは、説話に材を取ったいわゆる「王朝もの」。やはり芥川はここを押さえておきたいと思います。教科書の定番「羅生門」ももちろん傑作ですが、ここではあまり教科書ではみることのない作品を収録した本書を選んでみました。地獄変の屏風を描くため、一人娘を火にかける異常の天才絵師の物語「地獄変」をはじめ、黒澤明監督が「羅生門」の題名で映画化し、世界にクロサワの名を知らしめた「藪の中」(これは推理小説を読むようなおもしろさです)、王朝ものの最高傑作という人もいる「六の宮の姫君」など、いずれ劣らぬ名品揃いです。
古い物語の人物を現代の我々にきわめて身近な人物として蘇らせる芥川の見事な手際を味わうためにも、素材となった「今昔物語」 「宇治拾遺物語」 「古今著聞集」などを読み比べてみるのもおもしろいでしょう。
短編だけを書き続け、数多くの名作を残した芥川、その生涯が35歳で終わってしまったのは、日本文学にとって大きな損失だといえるでしょう。