からぶみ(故事成語教室)

 

第一回 漁夫の利

これから有名な故事成語を毎回一つずつ紹介し ます。故事成語は元々中国から入って来たものですが、長年月私たちの祖先によって語られる間に私たち日本人の言語生活の中にしっかりととけ込み、中にはあたかも元々日本人によって考えられたもののように思われるものすらあります。中国の、そして私たちの先人の知恵を受け継いでいきましょう。

この教室では教科書に紹介されていない故事成語について、教科書で紹介された出典を中心に紹介します。より多くの故事成語に触れてみて下さい。同時に漢文句法の基礎知識や漢文の背景知識についても説明していきますので、少しずつ新しい知識を吸収して下さい。その成果については演習問題で確認できるようにします。

第一回は「漁夫の利(「漁父の利」とも。その場合は「ぎょほ」と読む)」を紹介しましょう。

意味                                        Ct020.gif (3922 バイト)

両者が争っている隙に乗じて第三者が利益を得る意味です。争いごとをしていると、第三者の利益になるだけであるからと和解を求める場合に使ったり、対抗する両者の争いごとを上手に利用して利益を得る場合などに使ったりします。

この故事成語は前漢の劉向編の「戦国策」から出たものです。原文を白文と訓読文で並べて示します。

白文 訓読文
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この訓読文を参考に書き下し文を作ってみなさい。できたら次のボタンをクリックしなさい。

 

また口語訳をしなさい。できたらまた次のボタンをクリックしなさい。

解説                                         Ct068.gif (9104 バイト)

この辺で少し内容について解説をしておきましょう。戦国時代のことです。ある時隣接していた趙(戦国の七雄の一つ)が燕(同前)に攻め入ろうとしました。そのとき燕に取り立てられていた縦横家蘇代が燕の窮地を救うために易水を渡って趙に出かけていき、趙の恵王に対して説いた弁舌の一部がこの話です。 

蘇代が言おうとしたのは、燕と趙がつまらぬ争いをしていると両国とも疲弊し結果として強国秦(同前)が漁夫の利を占めてしまうぞと言うことです。地図を見ても分かるように趙の背後に秦が控えているのであるから、この戦いは燕よりも趙の方が損をするのだぞということを言いたかったのでしょう。このたとえ話が実に効果的なものだったためでしょう。趙の恵王はすぐに撤兵を命じました。

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戦国時代には「遠交近攻」という外交政策がしばしば採られました。どういう政策かというと、遠国と同盟をくみ、隣国を挟み撃ちする形で攻めていこうとするものです。この策は特に秦が得意としていた策でしたから、趙の恵王にしてみたら、もし万一燕と秦が同盟をくめば大変なことになるということも当然頭に入れていたでしょう。

類似表現を洋の東西から見つけて紹介します。

鷸蚌(いっぽう)の争い 

田夫の功               

Two dogs strive for a bone,and a third runs away with it.

こうしてみてみるとどこの国でも同じような教訓話があることが分かりますね。

では少し細かな句法についても勉強しましょう。

句法解説                    Cr001.gif (3383 バイト)

易水 もちろん固有名詞ですが、中国ではしばしば大河の名前に「江・河」などの漢字を用い、「川・水」を小さな川に用います。

 「まさニ」と読み、1まさしく、2ちょうどの意味を表します。ここでは2の意味です。

 「しかうシテ・しかシテ」(順接)「しかレドモ・しかルニ・しかモ」(逆接)のように順接・逆接の接続に使われます。他に1なんぢ(おまえ)2すなはち(そこで、〜のときには)とも使われます。

 「日」とは別字なので注意。「いはク」と読み、言うことには、の意味を表します。類似の表現に「謂(いへラク)」(言うことには)・「以為・謂(おもへラク)」(思うことには)などがあります。

不雨即 「不」は否定の助動詞「ず」の意味を表す。ここでは仮定の意味で用いられているので「ずンバ」と読みます。「雨」はここでは動詞として用いられているので「あめフル」と読みます。「即」は「すなはチ」と読みます。ふつうは、1すぐに、2そのまま、つまり、の意味で用いますが、ここでは、〜ならば、の意味で用いられています。なお、「すなはチ」と読む漢字として他に「乃・則・便・輒」(こういう字を同訓異義語という)があります。

 「まタ」と読み、〜もまた、の意味を表します。同訓異義語として「又・復」が他にあります。

 「いフ」と読みます。人に向かって言う場合に使います。

不肯 「肯」は「がへんズ」と読み、うなずく、聞き入れる、意味です。「不肯〜」は、「あへテ〜ず」(すすんで〜しようとしない)と読むこともあります。

 「あひ」と読み、1互いに、2ともに、3相手を(に)、の意味です。

一通り説明をしましたので、最後に確認のための問題を解いてみましょう。

演習問題(次の問題について答えがわかったらボタンをクリックしなさい。 )

                                               

問1両者が争っている隙に乗じて第三者が利益を得ることを「○○」の利と言います。○○に当たる部分に入る言葉を答えなさい。また別の表現としてどのようなものがあるか答えなさい。 

問2「燕・趙・秦」のような戦国時代の大国のことを何というか答えなさい。  

問3戦国時代には多くの思想家が活躍した。彼らのことを総称して何というか答えなさい。

問4蘇秦・張儀に代表される思想家達のことを何というか答えなさい。

問5孔子・孟子に代表される思想家達を何というか答えなさい。

問6老子・荘子に代表される思想家達を何というか答えなさい。

問7次の漢字の読みを答えなさい。

a正に b曰く c即ち d謂ひて e肯ぜず f亦た g乃ち h而して

問8次の漢文を書き下し文にしなさい。

a明日不雨即有死蚌  b両者不肯相舎

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