6.大学入試問題の解答

【要旨】 筆者は、日常・実用の言葉が文学表現として用いられると別のレヴェルの言葉になり、日ごろの社会生活で用いられる場合とは違った、豊かで生き生きした役割を果たすと述べている。これが「異化」である。優れた作品は言葉の単位から文章へ、次々と「異化」されているのである。我々はものとの関係で生きているが、実生活ではものをものとして意識することがなくなる。言葉は人とものとの関係の代行であるが、「異化」された言葉の力によって外界は新鮮になり、改めてものをものとしてはっきりとらえなおすことができる。言葉を「異化」することを学ぶには優れた文章を読むことであるが、それは文字になった言葉とは限らない。

【解答】

【問一】 (一) @惚れるツてことの Aこいつは Bちょいと Cホラ 忍ぶ恋さ

(二) ア=君は知るやイ=断腸 ウ=忍ぶ恋

【問二】 (ア)

【問三】 幼児は正しい言葉の用法に対する基本的な感覚をもっており、その上で言い間違えを面白がっているのであるから、それを矯正しようとすることは、言葉の多様性という文学の土台を否定することになるから。

【問四】 三好達治が用いた文語はパロディではなく、異化のために注意深く厳選し、真面目に用いられた表現の手段だということ。

【問五】 (一)=手をとるな (二)=旅人であり、異郷の地で心を通わす人もいない今は、たとえ冷たい石であろうともそこで心をやすめなさい。

【問六】 実生活の中で日常的に目に触れるものは、あまりに見慣れてしまい、改めてそのものと先入観なしに接し、見直す機会がなくなるということ。

【問七】 (a)=(イ) (b)=(イ) (c)=(ア) (d)=(ウ) (e)=(エ)

【問八】 (ア)=平板 (イ)=繰(り)返 (ウ)=厳格 (エ)=厄介 (オ)=練(錬)成

【問九】 (例) 現代の小説には、もう新しい表現や内容は不可能であるかのように私は感じていた。しかし、アゴタ・クリストフの『悪童日記』三部作を読んで、私はまさに目からうろこが落ちる思いを味わった。特に第一部の『悪童日記』は、一見すると、子供のたどたどしい「初等教育風作文」から構成されている作品である。この作品を読み始めた時、私はその文体が著者の奇を衒った作為から選ばれているのだと思い込んでいた。しかし、読み進むにつれ、幼稚な文体がかえって背後の暗く巨大な事実(オーストリア、ハンガリー国境で帝政ロシア・ナチスドイツ・社会主義ソ連に翻弄された人々の記録)をはっきりと、豊かなイメージを喚起しながら描き出すのに驚かされた。それは、私自身も語り尽くされたと思い込んでいた、現代史を生きた人々の全く新しい肉声であった。小学生のような文章から大きな歴史的テーマが生き生きと紡ぎ出される。このような言葉の働きが「異化」である。(四〇〇字)

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