陳丞相世家・口語訳

 漢の六年、ある人が皇帝に書を奉り、楚王の韓信が謀反を起こそうとしていると報告した者があった。高祖は諸将に尋ねた。諸将は「すぐさま兵を出して、若僧めを穴埋めにするだけです。」と答えた。高祖は黙っていた。その後陳平に尋ねた。陳平は答えを固く辞退し詫びて、「諸将はどう言っていますか。」と尋ねた。皇帝はくわしく話した。(この後会話文になるので、台詞のみを訳します.)
陳平「ある人が書を奉って韓信が謀反を起こすと言ったことを知っている者はいますか。」
「まだいない。」
陳平「韓信はこのことを知っていますか。」
「知らない。」
陳平「陛下の兵は、楚の兵と比べてどちらが精鋭でしょうか。」
「私の兵は(楚の兵に)及ばない。」
陳平「陛下の将で、兵を用いるのに韓信を上回ることの出来るものはいますか。」
「韓信に及ぶ者はいない。」
陳平「陛下の兵は楚の精兵に及ばず、陛下の将も韓信に及ぶことが出来ません。それにもかかわらず、兵を挙げて楚を攻めるのは、韓信に戦いを促すようなものです。陛下にとっては危険かと思うのです。」
「ではどうすればよいのか。」
陳平「昔の天子は地方へ出掛け、諸侯が一同に会しました。南方に雲夢という沢があります。陛下はお出掛けになり、いつわって雲夢にお出掛けになり、諸侯を陳に集めて下さい。陳は楚の西の国境です。韓信は天子が好誼でお出掛けになると聞けば、成り行き上、必ず何事もないと思って、郊外まで出迎えて拝謁するでしょう。拝謁に来たならば、陛下はそれにかこつけて韓信を捕虜となさいなさい。これならたった一人の力士で出来ることでしょう」
 高祖はその通りだと思った。

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