永州竜興寺息壌記
永州の竜興寺の東北の隅に堂があり、堂の地面は高くなっていて、敷き瓦を乗せたまま隆起して、広さ四歩、高さ一尺五寸である。最初に堂を作った時、地面を平らにしたのに、また高くなった。鍬を持って作業に当たった者は残らず死んでしまった。永州は楚と越の間にあるので、その地の人は皆物の怪やたたりを信じている。そのため寺の人は皆この土地を神として、平らにしようとする人はいなかった。
(中略)
昔の怪異を記した本に、洪水が天にあふれたとあり、鯀が舜帝の息壌(生きている土地)を盗み、それで洪水をふさいだため、舜帝は祝融に命じて羽郊で鯀を殺させたという。この言葉は経書には見えない。
今、この土地について、これを平らにしようとする人は不幸にして死ぬというのは、どうして舜帝が大事にしていた土だからということがあろうか。(この言い伝えのあった)南方には疫病が多く、働き疲れた人が先に死ぬ、すなわち、鍬を持った人々は、働き疲れて疫病にかかって死んだのである。土がどうして神であることがあろうか。私は、学ぶ者がこの地に来て、この言い伝えを根拠に、怪異を記した書物をひたすら信じてしまうことを恐れるため、堂にこれを書き記しておくのである。
復習のポイント
【すなはち】「すなはチ」と読む文字はいくつかあります。
則 @前を「〜レバ」と読んで、「レバソク」と呼ばれます。仮定で「〜ならば」の意味。
A前を「〜ハ」と読み、強意で「〜は」の意味。
即 「すぐに」の意味。「即席」等の熟語を思い出しましょう。
乃 前のことを受けて経過する、「そこで」。「意外にも」という気持ちを表わします。
便 「たやすく」という気持ちを持つ「すぐに」。
これらの文字は意味の違いよりも読み方がよく出題されます。気を付けておいて下さい。