『枕草子』について |
a『枕草子』の成立
平安時代にあっては紙はたいへん高価なものでした。当時の日記には上流貴族が紙を贈り物としていた記述があります。このことを考えると、『枕草子』の成立にあたっては中関白家や中宮定子など裕福な人々の援助があったと思われます。
『枕草子』によると、中宮定子の兄である藤原伊周が草子(紙をノート状に綴じ合わせた物)を中宮に献上した折に、中宮が「これに何を書こうか」と言うと、清少納言が「枕にこそはあらめ」と答えます。中宮は「さは、得てよ」と言ってその草子を清少納言に下さり、それに書き記した作品が「この草子」なのだというのです。
b『枕草子』の内容
ア 類聚的な段…「〜は〜」「〜もの。〜」のように言い出して、それに属するいろいろな物を列挙する形式。「山は」「花は」「すさまじきもの」などの段です。
イ 日記的な段…清少納言がある時ある所で経験した事柄を記した段。中宮定子を中心として、定子の兄弟である伊周・隆家や、斉信・行成などとの交渉を描いています。当時の宮廷生活の様子や上記の人々の性格がわかる貴重な文章が多い。「うへに候ふ御猫は」「雪のいと他買う高う降りたるを」などの段があります。
ウ 随筆的な段…清少納言が心に浮かんだことを自由に書いた段。「春はあけぼの」などがあります。
c作品に見る清少納言の感性。
『枕草子』は「をかし」の文学だといわれています。「をかし」とは、渡辺実氏によれば、「あはれ」のような持続的感情ではなく非持続的感情であり、また「陽性感情」であり「優位にある者の心」です。そのために「をかし」には「笑ふ」が伴います。確かに『枕草子』には「笑ふ」という語が頻出します。
『源氏物語』は「あはれ」の文学といわれます。二つを読み比べて考えてみましょう。