門出・口語訳
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり。
それの年の、十二月の、二十日余り一日の日の、戌の時に門出す。そのよし、いささかに、ものに書きつく。
ある人、県の四年五年はてて例のことども、みなし終へて、解由など取りて、住む館より出でて、船に乗るべき所へ渡る。かれこれ、知る知らぬ、送りす。年ごろ、よく比べつる人々なむ、別れがたく思ひて、日しきりに、とかくしつつののしるうちに、夜ふけぬ。
男も書くと聞いている日記というものを、女(である私)も書いてみようと思って、書くのだ。
ある年の、十二月の、二十一日の日の、午後8時頃に門出をする。その経緯を、少しばかり、ものに書き付けておく。
ある人が、県令の四五年を終えて恒例の引継ぎ事項など、みなやり終えて、解由などを受け取って、住んでいた館から出て、船に乗る予定の場所へ移動する。あの人この人、知っている人知らない人が、見送りをする。長年、親しく付き合った人々は、別れがたく思って、一日中、そうこうして騒いでいるうちに、夜が更けた。