更級日記・口語訳

sarasina.jpg (36111 バイト) (私が)このように思い屈してばかりいるのを、(私の)心を慰めようと、心配して、母が、物語などを探し求めてお見せ下さるので、なるほど自然に慰められてゆく。(『源氏物語』の)若紫の巻を見て、続きを見たいと思うけれども、人に話して頼むことも出来ず、誰もまだ都に慣れていない頃なので見つけることも出来ない。たいそうじれったく、読みたいと思うので、「この源氏物語を、一巻から残らず見せて下さい。」と心の中で祈る。親が太秦に参籠なさった時も、(一緒に行って)他の事ではなくこのことを(仏に)お願い申し上げて、(参籠が終わって寺を)出るやいなやこの物語を見終わってしまおうと思うが見ることが出来ない。たいそう残念に思い嘆いていると、おばにあたる人が田舎から上京して来たところに(親が私を)行かせたところ、「たいそう可愛らしく成長しましたねえ。」などと、いとおしがり、珍しがって、帰る時に、「何を差し上げましょうか。実用的な物は、つまらないでしょう。欲しがっていると聞いている物を差し上げましょう。」と、源氏物語の五十数巻、箱に入ったまま、(その他)在中将、とほぎみ・せり河・しらら・あさうづ等という物語を、一つの袋に入れて(下さり)、手に入れて帰る気持ちのうれしさは大変なものでした。
 胸をわくわくさせて、ほんの少しだけ見ては、筋も解らずにじれったく思った源氏物語を、一の巻から始めて、人も交じらず、几帳の中に伏して、次々に取り出して見る気持ち、后の位も何になるだろうか(何にもならない)。

 このページのカットは版画家・佐野正幸さんの作品です。そのホームページには古典を題材とした版画が紹介されています。興味のある人は …… p-rink.gif (724 バイト)

 

本文へ戻る     表紙へ戻る     演習へ進む