3、2つの旅行を1つにまとめる。
(旅客営業規則第26条、旅客営業取扱基準規程第43条、第115条)
大手保険会社に勤めるYは、営業担当で地方へ出張する事が頻繁にあった。その度に彼は旅費精算をするわけだが、何分安サラリーであるため日当がほとんどでない。かといって、部長みたいにグリーン乗車が認められていないのでその差額を頂くこともできない。もちろん、仕事なので18きっぷ利用の普通でいくこともできず、出張の度にブーブー文句を言ってきた。
そんな彼にある時、下の様な日程で出張が命じられた。
1日目
自宅(天王寺)→名古屋支社で会合→大阪本社に報告→自宅
2日目
自宅→大阪本社(通常勤務)→自宅
3日目
自宅→大阪本社→鳥取支社で会合→ホテル泊
4日目
ホテル→鳥取市内の客回り(営業)→自宅
◎会社から支給される交通費
大阪市内〜名古屋市内 (往復)6,520円
新大阪〜名古屋 新幹線自由席特急券 (往復)4,820円
大阪市内〜(智頭急行経由)〜鳥取 (往復)7,560円
大阪市内〜(智頭急行経由)〜鳥取 指定席特急券(往復)6,240円
計 25,140円
今度こそは、と思い彼は鉄道通の知り合いに相談を持ちかけた。その鉄道通氏は上の日程表と時刻表をにらめっこして次のプランを提案した。
1日目
天王寺→京橋→木津→亀山→名古屋→(東海道経由)→大阪→天王寺
3日目
天王寺→大阪→(東海道・山陽・智頭急行経由)→鳥取
4日目
鳥取→(山陰・福知山線経由)→尼崎→天王寺
ただし、1日目の名古屋→(東海道経由)→新大阪間は新幹線利用
3日目の大阪→(東海道・山陽・智頭急行経由)→鳥取は特急利用
4日目の鳥取→(山陰・福知山線経由)→宝塚は特急利用
◎交通費計算
乗車券(天王寺→京橋→木津→亀山→名古屋→(東海道経由)→大阪→(東海道・山陽・智頭急行経由)→鳥取→(山陰・福知山線経由)→尼崎)10,500円
乗車券(尼崎→塚本)120円
(注;塚本〜大阪〜天王寺間は通勤定期券を持っている。)
自由席特急券(名古屋→新大阪)2,410円
指定席特急券(大阪→鳥取)3,120円
自由席特急券(鳥取→宝塚)2,310円
計 18,460円
この2つを比較すると、後者の方が6,680円(運賃だけを見れば3,360円)安く上がる事が分かる。
読者のなかには、鉄道通氏が考案したプランにある10,500円の乗車券についてよく理解できない方もいらっしゃると思うのでここで、少し解説を加える。
そもそもJRの片道乗車券は、
重複、ぶつからない限り経路は自由に選べる
という一筆書きの原則がある。もちろん、
「それでは大都市近郊特例はどうなるのだ?」
と考えるかも知れないが、それはあくまでも乗客の利便制を考えた便法であって経路通りに買う事も当然できる。上の乗車券では、一筆書きになっているので片道乗車券として存在しうるのである。そして、
「特定都区市内・山手線内発着特例はどうなるのだ?」
と考える人に、この特例にはさらに
乗車経路が再度同じ特定都区市内を通過する時は、経路どおり計算してもよい
という特例がある。
この二つの規則によって、遠距離逓減制の恩恵を受けた長い片道乗車券を作ることができたのである。なお、大都市近郊特例、特定都区市内・山手線内発着特例に関しては
第2章 運賃計算の特例
6、一筆書き御用達。大都市近郊特例。
特定都区市内・山手線内発着特例。
をそれぞれ参照されたい。
なお、先ほどのYはこれでうかせた6,680円を道頓堀地区の景気を良くするために役立てた(?)そうである。無論、私にとって関与する事ではないが…。
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